ニューヨークで、変化を遂げた陶磁器鍋

有田で生まれた「UTSUWA美」が、初めてニューヨークにお目見えしたのは、2016年夏の事でした。3ヵ年事業である∞ARITAが始まり、参画事業者の大慶が、自社の主力商品である陶磁器鍋を、ニューヨーク現地での反応を見るために送り込んだのです。

ところが、UTSUWA美に対する一般消費者の反応はイマイチ。その大きな理由は、クッキングスタイルやライフスタイルの違いにありました。ひとつには、電子レンジを使った調理が、米国では一般的ではないこと。手軽な電子レンジ調理が、日本ではセールスポイントですが、ニューヨーカーには魅力的に感じられなかったのです。もうひとつには、食生活や電子レンジ使用を意識したサイズ展開は、米国で通常使用する鍋と比べ、とても小さいこと。そして、日本では人気の可愛い絵柄も、ニューヨーカーにとっては、幼く安価な印象を与えてしまう点にありました。

その中で、UTSUWA美に興味を示したのは、インテリア・デザイナーのジェネラル・ジャッド氏でした。ジャッド氏は、ブルーマンとして活躍した後、映画セットの仕事に携わる妻クリスティーナと、Me and General Designを設立。マンションやオフィス空間を、ライフスタイルを感じる、生きたスペースとして演出する仕事に定評があります。二人にとって、小物やオブジェ、アートやその他アクセントは、空間を仕上げる為に無くてはならないものだそうです。 ジャッド氏は、 空間のアクセントとして、UTSUWA美に着目しました。蓋付容器は、小物入れとして実用性もあり、人気のアイテムだそうです。楕円形のUTSUWA美は、タイムスリップしてきたような不思議なデザインで、キッチンなどに配置したら面白い、と期待を込めて語ってくれました。

さて、UTSUWA美は、1年半を経て、どのように変わったでしょうか。 ニューヨークでは、その後もヒアリングを重ね、事業者自身も、現地で多くの小売店や展示会を巡り、サイズ感、用途、デザインのトレンドを肌で感じ取りました。そして有田では、MIJPとの勉強会を通して、改めて自社商品の強み・弱みを見つめ直し、その上でターゲット顧客、ブランド、商品コンセプト、事業計画を練りました。更に、ニューヨークのクリエイティブ・ディレクターや専門家からのアドバイスを取り入れ、遂にHACHIが完成したのです。

2018年2月、NY NOWでのデビューを控えたHACHI。デビューに先駆け、2017年12月から2018年1月初頭にかけ、数名のユーザーに実際に商品を使用してもらい、その結果をヒアリングしました。ホリデー・シーズンに重なったこともあり、ユーザーには、特別なクリスマス・ディナーにも活用いただきました。アメリカでのクッキングスタイルや、お客様をお招きしたホームパーティが多いことなどを意識し、機能性にも優れ、テーブルを華やかに彩るモダンなデザインに変身したHACHI。今後、どのように北米市場に受け入れられていくか、とても楽しみですね。

LINE UP

  • "Made in Japan" in NYC

    工芸、デザイン界との幅広いネットワークを活かし、北米における日本製品の市場をリサーチ。アメリカにおけるクラフト事情から、2児の母として感じたアメリカライフなど掲載。

  • What's up in NYC

    NY市場でのビジネス展開企業のサポートや、飲食業界に精通。飲食業界の展示会やイベント、新店舗や卸情報など、「食」を通してニューヨークのトレンド満載なコラムを掲載。

  • Challenge NIPPONSAN!

    NY NOWなど日本企業の展示会出展支援を行いながら、みずから世界最大のアメリカ市場参入に奮闘する日々世界最大のアメリカ市場に挑む日々をコラム連載。

  • Marketing NOW

    最先端のマーケティング戦略を実践、世界から注目のアメリカ。話題の企業や店舗は顧客獲得のために何をしている?ミレニアル世代・デジタル世代に受け入れられている理由をさぐり、現地からレポート。Eiko Fujiwara